土曜日なので12時出勤だ。
週末という悪魔は、台風という兵器を以て尚その力を失わない。い・そ・が・し・い!!こんなに雨なのに狂おしいほどにお客様はやってくる。狂おしいっつーかもう苦しい。狂おしさで死ぬ。やっとのことで山を乗り越え、夜の営業に向けての充電のため、暫しの休憩に入る。
店で作ってもらったオムライスと、キッチンのスタッフさんがおまけで作ってくれた野菜炒めを抱え、従業員休憩室に行った。並んだテーブルには様々な部署のスタッフ達が何とも絶妙な距離感を保ちながら各々一息ついていた。眼科医、ドーナツ屋、事務員、ショップ店員、エトセトラ、エトセトラ…。大型ショッピングモールならではのカオスがここに在る。レストランスタッフの私は、のそのそと窓際の席に座った。
いつの間にか雨は止み、曇り空が目に入る。私は冷たいほうじ茶をすすり、いただきます、と昼食に手を合わせる。プラスチックのスプーンの袋を空け、とろとろの卵を端から崩していく。順調に食べ進めながら、ふと思う。
暑い。
私の真横にある窓からは、強い光が差し込み始めていた。雲間から太陽が顔を出しているのだ。他の窓のブラインドは全て閉まっていたため、光は入らない。この窓の傍の、この席に座る、この私にのみ当たる光だ。選ばれし者状態の私は、あまりの暑さで額に汗を滲ませた。皆涼しい顔をしているのに私は全身じっとりさせている。
恥ずかしい…。
そうだ、この窓のブラインドを閉めればいいのだ。至極簡単な話やん?そういうのって素敵やん?私は即座に席を立ち、ブラインドと向かい合う。
え、と…
どうすればいいん。コレ。
なんか、紐と、棒があった。とりあえず紐を引っ張るが、ブラインドがブラブラ揺れるだけで一向に降りてくる気配が無い。「???」つって、こんどは棒を握ってみる。回す。何も起こらない。引っ張る。変化無し。押す。揺らす。震わす。齧る。閉まらない。閉まらないんですけど――――――!!!!!
私はニヤニヤしながら席に着いた。人間、力及ばぬ時は無意味にニヤニヤしてしまうものだ。「及ばなかった〜」みたいな、「あちゃ〜」みたいな、ポップな悔しさを滲ませて、私はいち人間でありながら、ブラインドに思いっきり屈した。屈した私は相変わらず選ばれし者として光を浴びる羽目になり、食べてる途中でお腹いっぱいになり、お茶が足りなくなり、松尾スズキの文庫本にケチャップをこぼした。
嗚呼!みたいな。誰も私を見ないで!みたいな。ワーと叫んで身一つでこの場を去りたくてたまらない気分をギチギチと抑えながらパンパンの胃袋に昼食を詰め込み、逃げるように席を立った。コップを洗う私の視界の端、どこからかやってきたどこかの従業員さんがスルスルスル〜とブラインドを閉めるのが見えた。彼女はブラインドに屈した私の姿を見ていたんだろうか…?死にたい気分もミシミシと抑えながら、ガチャバタンダダダダダと職場に戻る。夜も狂おしいほどに忙しいゾ☆彡